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わたくしは間違っていた、ごめん。周波数統一は何のメリットも無い。

タケ
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わたくしは間違っていた、ごめん。周波数統一は何のメリットも無い。

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50Hzと60Hzのはなし。

タケです。

日本の周波数問題。東が50Hzで西が60Hz。

それが当たり前でこれまで普通に生きてきたからなぜそうなったのかなんて、もはや気にしなくてもいい話なんだけど、プラントの仕事をしていたらやっぱり軽くは知っておいてもいいのかな、少しは知ってるけどもうちょっと専門的に知っておこうかな、なんて思ったり。

いまさら人にも聞きにくいこの話。人に聞かれても、なんとなくぼやかして説明していませんか。「〜ホニャララ〜なんだって、知らんけど。」みたいな。

今までこすられまくった2つの周波数の歴史や問題点など、改めてみていきみましょう。
それではプラント百景スタートです!

2つの周波数

関東(直流)

時代は明治。
エジソンがウォール街を電灯で照らし始めた翌年の1883年、日本にも「東京電燈株式会社」が設立され本格的な電気の利用が始まります。
実際に電力供給が始まるのは4年後の1887年。南茅場町につくられた日本最初の火力発電所が210V直流3線式架空送電で運転を開始しました。

エジソンの開発した小型の直流発電機。需要家までの短い距離が直結された比較的小規模なインフラ。直流で近距離配電方式、その電圧は125V~210Vでした。直流なので周波数という概念はまだないです。

直流であるがゆえに電圧を高められず、導線(ケーブル)による配電の費用が高くなる弱点がありました。配電半径が1マイル(約1600m)くらいが限界だったそうです。

関西(60Hz)

交流のメリットは、直流のデメリットである変圧(電圧を変える)が容易なこと。 交流は小型の変圧器で電圧を変えることができ、いくつもの電圧をつくり出すことができます。 また発電所から送られる電気の圧力が高いほど、効率よく遠くまで電気を供給できます。

そこで関西。1888年に設立された「大阪電燈株式会社」が当初から交流送電を選択。日本で初めての交流発送電を行います。60Hz仕様のアメリカ・GE製発電機でした。

1889年に西道頓堀に建設した火力発電所に60Hz交流発電機を設置。高圧送電を開始しました。

ふたたび関東(だが50Hz)

交流の優位性の高まりに応じ、関東も交流送電への転換を決めました。
そこで50Hz仕様のドイツ・AEG製発電機を導入し、1893年に浅草火力発電所を稼動させました。これまでの小規模・直流・近距離配電方式から、大規模・交流・遠距離配電方式への転換です。

ほぼ同時期ですが関東と関西、この遠く離れた電力会社が別々に発電機を選択したことがその起源です。このとき、お互いを全然意識していなかったわけでもないと思いますが、東京と大阪、遠く離れた地域にはさほど影響しないとの判断だったのかも知れません。

タケ
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ターニングポイントはここだった。

それが同じ勢いで全国に拡大していき、そのぶつかったあたり(新潟県の糸魚川と、静岡県の富士川を結ぶ線を境)が50Hz、60Hzの境目となったわけです。せめて同じ県は同じ周波数にしても良かったような気もしますが、大きな川のほうが都合が良いのも理解できます。

ちなみに

沖縄は60Hzです。

ちなみのちなみに

日本以外にも50Hzと60Hzが共存している国があります。
アフガニスタン、パキスタン、インド、スリナム、旧オランダ領のアンティルです。これらの国も日本と同じか、別の何らかの事情があって2つの周波数ができてしまったようです。チーン。

問題点1

これはご存知のとおり、周波数が違うと電気機器が正常に動作しないことです。
プラント的にいうと具体的なものとしては、

  • 誘導電動機の回転数が変化する
  • 励磁電流が変化する

などが挙げられます。

1)誘導電動機回転数が変化する

一般的な三相誘導電動機の回転数は【回転数=(120×周波数)/極数】で表すことが出来ます。
簡単にいうと、

  • 60Hzは、2極だと1分間に3600回転、4極だと1分間に1800回転。
  • 50Hzは、2極だと1分間に3000回転、4極だと1分間に1500回転。

誘導モーターには”すべり”と呼ばれる特性があるので上記の回転数より少し遅くなります。プラントではいろんな役割の電動動機を使用していますが、回転数が変わるとプラントは求める性能を発揮できず正常な運転が出来ません。

2)励磁電流が変化する

励磁電流とはモーターコイルに電流を流して、電磁石化させる電流のことを言います。

たとえば60Hz用のモーターを50Hzの地域で使うと、『過励磁』になり騒音や振動が大きくなったり最悪、モーターが燃えたりします。

逆に50Hzのモーターを60Hzの地域で使用すると励磁電流は減少するので使用できないことはないと言われています。ただし、内部インピーダンスが周波数に比例して増大するのが原因で熱を持つことになり故障に繋がります。インピーダンスとは『電流の流れにくさ』のことで、発熱のほかに電圧降下も考えられます。

(あと、昔の機械式タイマーも時間が狂うようです)

問題点2

もう一つ大きな問題としては、電力供給の融通が利かないという点です。災害などで特定のエリアで電力不足が起こった場合に、異なる周波数のエリアからは電気を供給することができないのです。

最近では緊急時に東西で電力の供給ができるよう「周波数変換所」が作られたりしていますが、融通できる電力には限りがあり、完全互換供給はまだまだできないようです。

周波数変換所はどこにある?

現在3つあります。

  • 佐久間(さくま)周波数変換所(静岡県浜松市、1965年)
  • 新信濃(しんしなの)周波数変換所(長野県東筑摩郡、1977年)
  • 東清水(ひがししみず)周波数変換所(静岡県静岡市、2006年)

50ヘルツ系統と60ヘルツ系統が常時3地点、合計100万キロワット(一般家庭約3,000世帯分の電力に相当)の容量で連係できます。また、2011年の東日本大震災以降、東西間の融通電力を拡大するため、さらなる増設が検討されています。

タケ
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これって境目付近なら話はわかるけど、北海道や東北、逆に九州とかまで送電するのは難しいんでしょうね。(というかそんなに遠くまでカバーする必要もないのか・・・)

ヘルツフリー

近年、家電製品などには50Hz/60Hz共用のものが登場し、いわゆるヘルツフリーと呼ばれるものです。これは回路のインバーター化によって50Hz・60Hzが共用になっています。

インバーターとは『直流を交流に変換する装置』です。インバーターは半導体を使った直流を交流に変換する電力変換装置のことを指します。一般的に言われているインバーターは、コンバーター部・インバーター部・制御回路を組み合わせた装置のことで、任意の周波数と電圧に変換しモーターの回転速度をコントロールする装置です。コンバーター部で交流電源を直流電源に変換し、インバーター部でパルス状の疑似交流に変換し制御回路でパルスの周波数を変えてモーターの回転数をコントロールします。

回転速度は周波数のみで制御が可能なのですが、電圧を下げずに周波数を下げると、モーターの
交流抵抗が下がるので電流が大量に流れて焼損するため、電圧も変換する必要があります。そのため、周波数だけでなく電圧も同様に変更する必要があります。

上記のようなヘルツフリー機器は家電製品などには組み込みやすく、また、次々と新しいものに買い替えていく機器寿命や性能アップ需要の流れから一般家庭では簡単に周波数問題をヘルツフリー機器によってクリアすることができました。

いまさら無理

しかしプラントのような高電圧機器では理論的には可能であるもののまだまだ現実的ではありません。

プラントでは改修費用が莫大な金額になることや、改修期間中は電気の安定供給ができなくなるだけでなく工場の設備を取り替える必要があるので周波数対応は簡単ではありません。

また、「どちらがやるか問題」もあるでしょう。どちらかに合わせる、つまり片方は何もしなくて良い・・・これは大きな問題です。

このように統一するためには莫大な費用と時間がかかってしまうので、現在も日本の周波数は東日本と西日本で分かれたままなのです。

まとめ

たまたま輸入した発電機が50Hzと60Hzだった。
早い段階で手がつけれない状態になっていて、「もうこのままいこう」が続いてきたのだろうし、この先もきっと同じ。

せめて明治時代に東西ちゃんと話し合ってくれれば・・・でも周波数変換できてお互いに融通供給ができるならそれで全然いいじゃん。有事はともかく平時ならなんの支障もない話。日本全体を周波数統一する極論的な解決なんて必要ないんじゃないかな。

そんな周波数の話でした。

タケ
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でもなんか気持ち悪い・・・かな(ボソ)

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この記事を書いた人
タケ
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プラントエンジニア歴20年の男
電気EPC技師として国内・海外を20年間飛びまわる。働く環境づくりや人材採用テクニックに興味を持ち、人材派遣会社のマネージャー職に転身。その後、エンジニア採用や企業広報を支援すべく起業。業界内の新しい価値を生み出すためのプロジェクトとして本ウェブマガジン『プラント百景』や転職サイト『プラント特区』を手掛ける。
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