私感
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乱立バトルロイヤル!プラントオペレーションの”マイシステム”開発戦争

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独自プラントオペレーションシステム開発についての考察

はじめに

近年、プラントオペレーティングシステムの独自開発競争が大手企業を中心に目立つようになり、その導入も急がれています。この現象は技術の進化やビジネスニーズの多様化を背景に持つ一方で、多くの課題や問題点を引き起こしているという声も多く聞かれます。本記事では、この問題について深く考察していきます。

プラントオペレーティングシステムとは

大規模な産業用プラントのオペレーションを支援・最適化するためのコンピュータシステムやソフトウェアです。これらのシステムは、センサーや計測機器からのリアルタイムデータを収集し、中央でモニタリングします。さらに、各機器の動作を自動的に制御し、プラント全体の運用を最適化する役割があります。予知保全やAIを利用したデータ解析を活用して、故障の予測や生産性の向上策を提案することも増えてきました。ユーザーフレンドリーなインターフェースが提供され、オペレータは直感的にシステムを操作できます。このシステムは、プラントの安全性と効率性を確保するための核となる技術です。

それではいきましょう、プラント百景スタート!

プラントオペレーションシステムの必要性

プラントオペレーティングシステムがなかった時代、プラントの運用は以下のような方法で行われていました。

手動操作: 多くの操作は人手によって行われていました。バルブの開閉や機器のスイッチ操作、温度や圧力の調整などは、オペレーターが実際に現場で行う必要がありました。

アナログ計器: プラントの状態やデータは、アナログ計器や指針式のゲージを用いてモニタリングされていました。オペレーターはこれらの計器を定期的に確認し、必要な操作や調整を行っていました。

手書きの記録: 生産データや機器の状態、トラブルの履歴などは、手書きでログブックや記録用紙に記録されていました。

通信の制限: オペレーターや技術者間のコミュニケーションは、主に無線や電話、さらには直接の対面によって行われていました。

定期的な点検: プラントの安全性や効率的な運用のためには、定期的な点検やメンテナンスが必要で、多くの人手と時間を要する作業でした。

故障時の対応: センサーや自動監視機能が限られていたため、異常や故障が発生した際の対応は、オペレーターの経験や勘、直感に頼る部分が大きかった。

これらの運用方法は、当時の技術や知識に基づいて最良の方法であったと言えます。しかし、手動の操作やアナログの管理方法には限界も多く、ミスや人的エラー、効率の低下などの問題が生じる可能性が高まっていました。プラントオペレーティングシステムの導入によって、これらの問題点が大きく改善され、安全性や生産効率の向上が実現されました。

現代の製造業は、生産量の増加や品質管理の要求、エネルギー効率の向上など、多岐にわたる要因によって複雑化しており、これらの要因を同時に追求するためには、高度な自動化と情報管理が必要となります。プラントオペレーティングシステムは、プラントの生産活動やプロセスを効率的に管理・制御するための不可欠なツールです。

プラントオペレーティングシステムは、これらの要求を満たすために設計されており、センサーやアクチュエータ、制御機器といったハードウェアを統合的に制御するソフトウェアプラットフォームを提供します。このシステムを利用することで、オペレーターはリアルタイムでの生産データのモニタリングや、トラブル発生時の迅速な対応、さらには生産効率の最適化といった多様な作業を一元的に行うことが可能となります。
結果として、製品の品質向上、生産コストの削減、安全性の確保といった多くのメリットが実現され、企業の競争力を高める上での重要な役割を果たしています。

プラントオペレーティングシステムの開発企業の覇権争いは、競争の激しい産業において一般的です。この分野では多くの企業が競い合っており、市場でのリーダーシップを確立しようと日々競争されています。

これまでもたくさんあった国産プラントオペレーションシステム

日本のプラントオペレーションシステムに関する主要な10の例を以下に示します。

【Yokogawa – CENTUMシリーズ】
長い歴史を持つYokogawaの制御システム。最新のCENTUM VPは高い信頼性とユーザーフレンドリーなインターフェースを持つ。

【Toshiba – Toshiba Integrated Controller (TIC)シリーズ】
様々な制御ニーズに対応する統合制御システム。特に、耐障害性を重視した設計がされている。

Mitsubishi Electric – iQ-Rシリーズ】
プロセス制御から生産管理、情報管理まで幅広く対応する統合オートメーションプラットフォーム。

【Hitachi – HIACSシリーズ】
プラントオートメーションシステム。エネルギー、化学、食品など多岐にわたる業界で利用されている。

【Azbil (旧山武) – Harmonas-DEOシリーズ】
プラントやビルの制御に特化した統合型システム。エネルギー管理や安全性の向上に寄与する。

【Fuji Electric – MICREXシリーズ】
プラントオートメーションやプロセス制御に用いられる制御装置。長い実績と信頼性を持つ。

【IHI – IPACSシリーズ】
IHIが提供するプロセスオートメーション制御システム。エネルギー、化学、製鉄などの業界で使用されている。

【Omron – Sysmacシリーズ】
オートメーションプラットフォームとして幅広い産業で利用される。統合された開発環境を提供している。

【JSOL – J-Plant】
プラント全体の生産活動を最適化するためのソフトウェア。シミュレーション機能などを活用して、効率的なプラント運用をサポートする。

【NEC – NEPlant®】
プラントの生産効率や品質向上を支援する統合制御システム。安全・信頼性を重視した機能やデザインが採用されている。

    これらのシステムは、それぞれが独自の特性や機能を持ち、特定のニーズや環境に合わせて選択されるものです。日本の企業は、技術革新と高品質な製品開発において常に先駆けてきたため、これらのシステムもその反映として高い評価を受けています。

    プラントオペレーションシステムの独自開発の背景

    プラントオペレーションシステムの独自開発の背景には、各企業の特定の要求や市場のニーズ、そして技術的な進歩と競争が絡み合っています。

    多くの産業界でデジタルトランスフォーメーションが進む中、プラント業界も例外ではなく、最適化、効率化、そして安全性の向上が求められてきました。

    しかし、既存の商用オペレーションシステムでは、各企業の特有の要求や特定の環境、設備に対する独特な対応が難しかったのです。特に、プラントの運用は、地域や用途、使用される材料などによって大きく異なるため、一つのシステムで全てをカバーするのは困難でした。

    このような背景から、企業は独自の要求に合わせた柔軟性と最適化を追求し、自社のニーズを完全に満たすオペレーションシステムを独自に開発する方向に舵を切ったのです。さらに、独自開発により、企業は短期的なROI(投資回収期間)の短縮や、長期的な運用コストの削減を目指すことができ、これが独自開発の大きな推進力となっています。

    独自開発の乱立の背後にある理由は、市場の急速な変化と企業の競争力向上への取り組みに起因しています。現代のビジネス環境は、テクノロジーの進化、消費者のニーズの多様化、新しいビジネスモデルの登場など、様々な要因により日々変化しています。この変化に対応するため、企業は独自のビジョンや戦略を迅速に実現する能力が求められています。

    既存の汎用ソフトウェアやシステムは、多くの場合、広範なニーズをカバーするために設計されており、特定のニーズや独自のビジネスプロセスに完全に適合するわけではありません。そのため、企業は自らの独特な要求を正確に満たすシステムを持つことで、競争上の優位性を築くか、あるいは維持することを目指して独自開発を進めるのです。

    また、独自開発によって、企業は技術の秘匿性を保持しつつ、特許や知的財産の権利を確保することもできます。これにより、技術的な独占や市場における独自の位置づけを強化することが可能となります。このような背景から、多くの企業が独自開発の道を選ぶこととなり、その結果として市場には様々な独自システムが乱立する状況が生まれているのです。

    近年のプラントオペレーティングシステムの特徴

    プラントオペレーティングシステムの進化にはいくつかの重要な違いが見られます。以下に、これまでのプラントオペレーティングシステムと最近開発されたプラントオペレーティングシステムの主な違いをいくつか示します。

    1. デジタル化とIoTの統合: 最新のプラントオペレーティングシステムは、デジタル化とインターネット・オブ・シングス(IoT)技術を積極的に統合しています。これにより、リアルタイムのデータ収集、モニタリング、および分析が可能になり、効率性と生産性が向上します。
    2. クラウドベースのソリューション: 新しいプラントオペレーティングシステムは、クラウドベースのアーキテクチャを活用して、データの中央集約、リモートアクセス、スケーラビリティの向上を実現しています。これにより、地理的に分散したプラントの管理が容易になります。
    3. 人工知能(AI)と機械学習の活用: 最新のプラントオペレーティングシステムは、AIや機械学習アルゴリズムを活用して、故障予測、最適化、自動化などの高度な機能を提供します。これにより、保全作業や生産計画の最適化が実現されます。
    4. セキュリティの強化: 現代のプラントオペレーティングシステムは、サイバーセキュリティに対する高い注意を払っており、強力なセキュリティ機能を組み込んでいます。プラントのデータおよび運用プロセスの保護が強化されています。
    5. 柔軟性と拡張性: 新しいシステムは、柔軟性と拡張性が高いため、さまざまな産業やプラントに適応しやすくなりました。カスタマイズやモジュールの追加が容易であり、将来のニーズに対応できます。
    6. ユーザビリティの向上: インターフェースやユーザビリティにも改良が見られ、オペレーターがシステムをより効果的に操作できるようになりました。

    要するに、最新のプラントオペレーティングシステムは、デジタル技術と最新のテクノロジーを活用し、効率性、可用性、セキュリティ、柔軟性を向上させるために設計されています。これにより、プラントの運用管理がより効果的かつ持続可能になります。

    たとえば

    【千代田化工建設 – plantOS®】
    千代田グループがこれまで提供してきた産業設備/プラント向け、メンテナンス分野における現場中心のフィジカルサポートと、当社が長年培ってきた高度分析、解析サービス、IoT、クラウドやAIなどの最新のデジタル技術を、ハイブリッドに融合したメンテナンスと、オペレーション向けのサービス。

    【東洋エンジニアリング – DX-PLANT®】
    プラント操業効率化を図るためにクラウド上に実装されるDXサービス。性能モニタリングや異常予兆検知・原因分析、エチレン分解管表面温度推算・予測による分解炉運転計画の最適化支援など。

    【清水建設 – DX-Core】
    複数の施設に導入したDX-Coreから取得した情報を、インターネット上で一元管理するDX-Coreクラウドを通して、施設以外の公共情報として都市OSに連携。都市・建物デジタルツインへの活用を行うことで、スマートシティの実現にも寄与。

    【横河ソリューションサービス/NTTコミュニケーションズ – AIプラント運転支援ソリューション】
    稼働中の化学プラント内各種センサーから取得した温度や圧力などのデータをもとに、AIモデルが運転員に手動オペレーションの推奨値をガイダンス表示するもの。横河ソリューションサービスのノウハウ、NTT Comが提供するAI開発ツール「Node-AI」により作成されたAIモデルを組み合わせ実現。


    など。

    独自開発の乱立による問題点

    独自開発の乱立には多くの利点がある一方、以下のような問題点や懸念も生じています。

    相互運用性の欠如: 企業ごとに異なるシステムが開発されることで、システム間の相互互換性が損なわれ、データのやり取りや連携が困難となる。これにより、企業間の連携や合同プロジェクトが難しくなる可能性がある。

    高いコスト: ゼロからの独自開発は、時間も費用もかかる。特に、すでに開発されている汎用のシステムを利用する場合と比較して、独自開発の初期投資や維持コストは高くなりがち。

    技術者の育成・維持: 独自システムを維持・運用するためには、そのシステムに詳しい専門の技術者が不可欠。しかし、独自の技術やツールに習熟した技術者を育成・確保するのは難しく、また、高コストがかかる場合もある。

    技術の孤立: 独自開発を進めるあまり、国際的な標準や他の企業が採用している技術の進歩から取り残されるリスクがある。これにより、将来的に新しい技術やトレンドに追随するのが難しくなる可能性がある。

    独自システムの持続性: 企業の方針変更や技術の進歩など、外部・内部の要因により、独自システムの更新や維持が困難となる場合がある。長期的な運用を考慮したとき、独自システムが持続的にサポートされるかどうかは大きな問題となる。

    これらの問題点は、企業が独自開発の方針を決定する際に慎重な検討が必要となるポイントであり、無闇に独自開発を推進することが企業の競争力を低下させる原因となる可能性もある。

    今後の方向性と提案

    独自開発の乱立が生じている現状を踏まえ、今後の方向性としては、業界全体の持続可能な成長とイノベーションの推進を目指すための標準化や共同開発の取り組みが考えられます。

    まず、技術の標準化が不可欠です。これにより、各企業が独自に開発したシステムやソリューション間での相互運用性が向上し、データの交換や統合が容易になります。特に、IoTやAIなどの新しい技術が急速に進化している現在、共通のプラットフォームやインターフェースを持つことで、業界全体の技術革新のスピードを加速することができます。

    次に、企業間の共同開発やパートナーシップの推進も重要です。複数の企業が共同でリソースや知識を共有し、一つのプロジェクトやプラットフォームを開発することで、開発コストの削減やリスクの分散、さらには新しいビジネスモデルの創出などのメリットが期待できます。このような取り組みにより、業界全体としての競争力が向上し、持続可能な成長が促進されるでしょう。

    また、オープンソースの取り組みも考慮すべきです。特定の技術やツールをオープンソースとして公開することで、開発者コミュニティ全体の貢献や改善が受け入れられるようになります。これにより、技術の進化やイノベーションが加速され、同時に多くの企業がその技術を採用しやすくなります。

    さらに、教育や研修の強化も必要です。新しい技術やツールの導入に伴い、それに関連する知識やスキルを持つ人材が不足している場合が多いです。企業や業界団体は、定期的な研修やセミナーを提供することで、技術者やオペレーターのスキルアップを支援すべきです。

    最後に、環境や社会への影響を考慮したサステナビリティの取り組みも不可欠です。独自開発の推進や技術革新だけでなく、環境保護や地域社会との共生を目指すことで、企業の社会的責任を果たし、持続可能な成長を実現することができます。

    以上のような方向性や提案を採用することで、独自開発の乱立による問題を克服し、業界全体の競争力向上と持続可能な成長を実現するための土壌を築くことができるでしょう。

    まとめ

    近年の独自開発の乱立は、多くの企業が技術革新や競争優位性を求める結果として起きています。その背景には、市場の急速な変化、消費者の多様なニーズ、そして新たなビジネスモデルの登場が挙げられます。こうした独自開発は、各企業の特定の要求や目的に応えるためのもので、それぞれのビジョンや戦略の実現を目指しています。

    しかしこのような動きには、明らかな問題点や課題も浮かび上がってきました。特に、相互運用性の欠如、高い開発コスト、技術者の育成・維持の困難さ、そして技術の孤立といった点が顕著に挙げられます。これらの問題は、独自開発の持つ短期的なメリットを超えて、長期的な視野での企業の競争力や持続可能性に影響を与える可能性があります。

    そのため、今後の方向性として、技術の標準化、企業間の共同開発やパートナーシップ、オープンソースの活用、そして教育や研修の強化が求められています。これらの取り組みは、各企業の独自の要求や目的を損なうことなく、業界全体の持続可能な成長とイノベーションを推進するためのものです。

    また、サステナビリティの取り組みも重要となるでしょう。技術革新や競争優位性の追求だけでなく、環境保護や地域社会との共生を考慮することで、企業の社会的責任を果たし、より持続可能な成長を追求することができます。

    結論として、独自開発の乱立は企業の短期的なニーズや目的を満たすためのものであり、それ自体が問題ではありません。しかし、その結果として生じる問題や課題を無視することなく、これらを解決する方向性や取り組みを追求することで、企業個々の競争力と業界全体の持続可能な成長を実現するための土壌を築くことが求められています。

    また、国産プラントオペレーションシステムのガラパゴス化も深刻な問題で、国内市場特有の要求に過度に適応して国際標準との乖離を招いています。これが国産システムの国外展開を難しくし、競争力を低下させ、セキュリティリスクを増大させています。
    イノベーションを阻害し、新技術の採用を難しくしており、国際市場での競争に対応するためには、国内外の最新技術と連携し、標準化を進める必要があります。国内の開発者や企業は、国際市場でも競争力を発揮できるよう、技術の進化と国際的な連携に注力すべきかもしれません。

    ではでは。

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    この記事を書いた人
    タケ
    タケ
    プラントエンジニア歴20年の男
    電気EPC技師として国内・海外を20年間飛びまわる。働く環境づくりや人材採用テクニックに興味を持ち、人材派遣会社のマネージャー職に転身。その後、エンジニア採用や企業広報を支援すべく起業。業界内の新しい価値を生み出すためのプロジェクトとして本ウェブマガジン『プラント百景』や転職サイト『プラント特区』を手掛ける。
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